3-3 免疫
3-3-1 生体防御
No.25 生体防御は物理・化学的防御+免疫で成り立つのだ。
授業の目標
生体防御のうち、自然免疫と獲得免疫の違いについて説明できる。
重要語句
□生体防御
…生物が異物からからだを守る働き。非特異的生体防御と特異的生体防御に分けられる。
□NK細胞
…ナチュラルキラー細胞(Natural Killer cell)。自然免疫に働くリンパ球で、全身を巡回しながら異物を発見しだい、攻撃・破壊する。
授業内容
□ヒトのからだは常に危険にさらされている。
→体外からは、病原体などの異物が侵入を図る。
※病原体…病気の原因となる細菌やウイルス
→体内では、がん細胞が発生する。
※がん細胞…無限に増殖(体細胞分裂)し続ける細胞
↓
これらの危険を放置すれば、発病する(感染症、がんなど)。
↓
異物からからだを守るため、3段階の生体防御で対応する。
…生体防御には
・すべての異物に対応できる非特異性を持つもの
・特定の異物にのみ対応する特異性を持つもの
の2種類がある。
①物理的・化学的防御(非特異性)
…体内への異物の侵入を防ぐ。
例)
物理的防御
・皮膚では体内への異物の侵入を防ぐ。
・咽頭や気管では、粘膜より粘液が分泌され、異物を排除する。
化学的防御
・目から分泌される涙に含まれる酵素(リゾチーム、細菌類の細胞壁を溶かす)は殺菌作用がある。
・汗に含まれる酵素で菌の繁殖を抑制する。
・胃では塩酸・酵素の分泌により殺菌する。
・大腸では腸内細菌が栄養素を奪い、病原菌の繁殖を防止する。
②自然免疫(非特異性)…生まれつき備わっている免疫システム
…体内に侵入した異物を取り込み、分解する(=食作用)
→食作用を行う樹状細胞、マクロファージといった大型の白血球を食細胞という。
→食細胞の働きを助けるため、からだは炎症反応を起こす。
※炎症反応…血流の増加や、血管内からの浸潤によって赤くなったり腫れたりすること。白血球が血管外へ出るのを助ける役割がある。
…NK細胞ががん細胞などの異質な細胞を破壊する。
③獲得免疫(特異性)…異物の侵入後につくられる免疫システム
…自然免疫では防ぎきれない異物を排除する。
例)体液性免疫(No.26で紹介)
細胞性免疫(No.27で紹介)
3-3 免疫
3-3-2 免疫のしくみ
No.26 侵入した抗原は抗体によって不活性化されるのだ。
授業の目標
抗原・抗体の定義を理解し、抗原抗体反応について説明できる。
重要語句
□ヘルパーT細胞
…T細胞のうち、樹状細胞からの抗原提示を受け、B細胞やキラーT細胞など活性化させる働きを持つもの。
□B細胞
…骨髄(Bone marrow)で造血幹細胞から分化・成熟するリンパ球。特定の抗原によって分裂・増殖し、抗体産生細胞に分化する。
授業内容
□獲得免疫は異物の侵入によってつくられる。
→獲得免疫を誘導する異物(細菌やウイルスなどの病原体、花粉、一部の食物など)を抗原という。
→抗原に対して体内でつくられる、抗原と特異的に結合する物質を抗体という。
…抗体の正体は免疫グロブリンというタンパク質である。
→抗原に対して特異的な抗体が結合し、抗原を不活性化させることを抗原抗体反応という。
□抗原抗体反応は体液中で行われるため、抗原抗体反応による免疫システムを体液性免疫という。
【体液性免疫の過程】
①病原体などの抗原が体内(体液中)に侵入する。
②樹状細胞・マクロファージといった大型の白血球が食作用により抗原を分解する。また、抗原の一部が大型の白血球の細胞表面に提示される(=抗原提示)。
③提示された抗原に特異的なヘルパーT細胞が抗原を認識し、インターロイキンを放出する。
※体内には多数の抗原に1対1で対応できるように多数のヘルパーT細胞が用意されている。例えば、インフルエンザウイルス(抗原)にはインフルエンザウイルスに特異的なヘルパーT細胞が存在している。
④ヘルパーT細胞からのインターロイキンに刺激された特異的なB細胞が増殖する。
↓
この後、増殖したB細胞は2つの道を歩む。
↓
⑤B細胞の一部は抗体産生細胞へと分化し、抗原に特異的な抗体をつくる。
⑥抗体が抗原と特異的に結合する抗原抗体反応が起こる。
⑦不活性化された抗原はマクロファージの食作用によって分解され、体内から除去される。
⑧抗原が除去されると、抗体はなくなり、やがて抗体産生細胞も消滅する。
※抗体は永遠に体内に残るわけではない。
↓
⑤'B細胞の一部は記憶細胞へと分化し、体内に残る。
⑥'2度目以降に同じ抗原が侵入した場合は、記憶細胞が短時間で大量の抗体を産生し、抗原抗体反応が起こる。
…このように2度目以降の抗原の侵入時に短時間で大量の抗体が産生される過程を二次応答という。
3-3 免疫
3-3-2 免疫のしくみ
No.27 感染細胞はキラーT細胞によって破壊されるのだ。
授業の目標
拒絶反応が起こる仕組みを細胞性免疫に注目して説明できる。
重要語句
□キラーT細胞
…T細胞のうち、抗原に感染した自己の細胞を直接攻撃し、破壊するもの。
□拒絶反応
…移植された他人の臓器が定着せずに脱落する現象。キラーT細胞による移植臓器への攻撃・排除がその原因である。
授業内容
□病原体(抗原)は体液から細胞内への侵入を目指す。
→①抗体は細胞内に入れない(=感染細胞に抗体は無効である)。
→②細胞内にはDNAやその他の物質が豊富である。
→病原体の侵入を許した細胞は感染細胞となる。
…感染細胞は「非自己」の細胞とみなされ、キラーT細胞から直接攻撃を受け破壊される(=細胞性免疫)。
【細胞性免疫の過程】
①感染細胞やがん細胞(=非自己の細胞)が体内にできる。
②樹状細胞・マクロファージといった大型の細胞が非自己の細胞を食作用で分解する。また、その一部が細胞表面に提示される。
③提示された抗原に特異的なヘルパーT細胞が抗原を認識し、インターロイキンを放出する。
④ヘルパーT細胞からのインターロイキンに刺激された特異的なキラーT細胞が増殖する。
↓
この後、増殖したキラーT細胞は2通りの道を歩む。
↓
⑤キラーT細胞の一部は活性化し、感染細胞を直接攻撃し、破壊する。
↓
⑤’キラーT細胞の一部は記憶細胞として体内に残る。
⑥'2度目以降の同じ感染細胞の発生時には記憶細胞が以前よりも短期間で感染細胞を攻撃、破壊する(=二次応答)
□移植された他人の臓器は、「非自己」の細胞とみなされる。
→細胞性免疫が働き、キラーT細胞によって破壊される。
→臓器は定着せずに脱落する…拒絶反応
【拒絶反応を防ぐには…】
①免疫抑制剤を使用する。
…免疫反応を抑える薬を投与する。特定の免疫反応を抑えるわけではないので、病原体からの感染を防ぐなどの対応が必要になる。
②DNAが近い人から臓器の提供を受ける。
…自己・非自己の識別はHLAによる。兄弟間では25%の確率で完全に一致する。
3-3 免疫
3-3-2 免疫のしくみ
No.28 免疫機能の過不足はからだにとって重要な問題なのだ。
授業の目標
予防接種の意義を、ワクチンと獲得免疫の仕組みを踏まえて説明できる。
重要語句
□アレルギー
…花粉、卵白、ダニなどの特定の抗原(アレルゲン)に対して、免疫反応が過剰に起こり、生体に不都合が生じる状態。
□ワクチン
…予防接種に用いられる弱毒化した病原体や毒素。
授業内容
□免疫機能が低下すると、感染症にかかりやすくなる。
→栄養や休養をとることで免疫力を高める=自然免疫がしっかり働く状態をつくる。
→低下の度合いが大きくなると(=免疫不全)、日和見感染(健康な状態ならば感染しないような弱い病原体によって引き起こされる感染症)の危険性が出てくる。
(例)AIDS Acquired ImmunoDeficiency Syndrome
・日本語ではエイズ(後天性免疫不全症候群)という。
・原因はHIV(Human Immunodeficiency Virus、ヒト免疫不全ウイルス)がヘルパーT細胞に感染すること。
→HIVに感染したヘルパーT細胞は正常な機能を果たせない。
→①B細胞に抗体をつくらせることができない。
(B細胞が交代産生細胞に分化するにはヘルパーT細胞からのインターロイキンが必要である)
→②キラーT細胞が働けない。
(キラーT細胞の活性化にはヘルパーT細胞からのインターロイキンが必要である)
・現在ではHIVの働きを抑える治療が行われている。
□免疫機能が過剰に働くと不都合が生じる。
(例)アレルギー
・特定の抗原(=アレルゲン)に対して、特殊な抗体がつくられる。アレルゲンの再侵入時に抗原抗体反応が起こると、ヒスタミンが放出される。
※ヒスタミンはアレルギー症状を引き起こす物質。
※花粉症の薬には抗ヒスタミン剤が含まれている。
・全身に起こる急性アレルギー反応をアナフィラキシーという。
→スズメバチの毒や、薬、食物により起こる。
→最悪の場合、死に至る。
□免疫機能やその仕組みは医療にも応用される。
①予防接種…弱毒化した抗原(=ワクチン)を体内に入れることで、記憶細胞をつくり、病原体の侵入時には二次応答によって発症を防ぐ。
②血清療法…あらかじめウマなど他の動物に抗原(ヘビの毒など)を注射し、抗体をつくらせる。その後、抗体を含む血液を取り出し、さらにそこから血清を取り出す(血清中には抗体が含まれる)。ヘビに咬まれたりした時は、その血清を摂取することで、抗原抗体反応を起こし、治療する。
3-2 体内環境維持のしくみ
3-2-1 自律神経系による調節
No.29 自律神経系が状況に応じて調節しているのだ。
授業の目標
心拍数の増加と減少を自律神経の働きを踏まえて説明できる。
重要語句
□中枢神経系
…多数の神経細胞が集まり、形態的・機能的な中枢となる神経の部位。脳と脊髄で構成される。
□末梢神経系
…中枢神経系とからだの各部を結ぶ神経。体性神経系と自律神経系で構成される。
授業内容
□動物では神経細胞(ニューロン)のつながりである神経系が発達している。
※神経は、情報伝達に関わる組織である。
①中枢神経系=脳+脊髄
…脊椎動物の脳は大脳・小脳・中脳・間脳・延髄からなる。
↓
視床下部が自律神経系の中枢となる。
②末梢神経系=体性神経系(感覚神経+運動神経)+自律神経系
…大脳の判断をもとに、運動神経は筋肉へ情報を伝える。
…間脳視床下部の判断をもとに自律神経系は内臓・腺・血管を自動的に調節する。
間脳視床下部
BodyParts3Dで作成。
向かって左側が前方になる。赤い部分が間脳。さらに濃くなっている部分が視床下部である。
□自律神経系は2種類の神経からなる。
①交感神経…緊張・興奮時に働く(「闘争(fight)」と「逃走(flight)」の神経)
→末端からノルアドレナリンを分泌し、各器官でエネルギーを消費するように調整する。
(例)全身に酸素やグルコースを送るため、心臓の拍動が促進される。
②副交感神経…休息時に働く(生命維持に努める)
→末端からアセチルコリンを分泌し、各器官でエネルギーが蓄積されるように調整する。
(例)グルコースなどを吸収するため、胃腸の運動が促進される。
3-2 体内環境維持のしくみ
3-2-2 ホルモンによる調節
No.30 内分泌系も状況に応じて調節しているのだ。
授業の目標
ホルモンとはどのような物質であるか、適切な語句を用いて説明できる。
重要語句
□腺
…特定の物質を分泌し、細胞外に排出する機能を持つ組織。内分泌腺と外分泌腺に大別される。
□標的細胞
…標的器官を構成する細胞。特定のホルモンと結合する受容体を持つ。
□脳下垂体
…間脳から垂れ下がる内分泌腺。視床下部の支配を受けながら様々なホルモンを分泌する。
授業内容
□ホルモンは血液によって運搬され、標的器官に作用する化学物質である。
①内分泌腺(視床下部、脳下垂体、甲状腺など)でつくられる。
②ごく微量で作用する。
③血液によって運搬される。
※バソプレシンは神経分泌細胞の軸索(神経細胞に見られる長い突起)中を移動する。
④標的細胞の受容体に結合して、作用する。
→ホルモンによる情報伝達系を内分泌系という。
□間脳視床下部は内分泌系の中枢として働く。
視床下部から内分泌腺への働きかけは2つの方法がある。
①視床下部内の神経分泌細胞から放出ホルモンを分泌する。
↓
放出ホルモンを受容した脳下垂体前葉は各内分泌腺に刺激ホルモンを分泌
する。
(例)成長ホルモンの分泌(図39)
②視床下部から自律神経(交感神経・副交感神経)通じて内分泌腺に働きかける。
(例)アドレナリンの分泌(図40)
図41 ホルモンの作用
□ホルモンの血中濃度が上昇すると、分泌が抑制される。
…フィードバック調節
(例)チロキシンの分泌が過剰になると、
①視床下部からの甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が抑制
②脳下垂体前葉からの甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制
③甲状腺からのチロキシンの分泌が抑制
※脳下垂体前葉を摘出すると、甲状腺が縮小する
(甲状腺刺激ホルモンが分泌されないため、チロキシンが分泌されなくなる)
3-2 体内環境維持のしくみ
3-2-3 自律神経系と内分泌系による調節
No.31 血糖量と体温の維持は生命維持の要なのだ。
授業の目標
血糖量を増加させる方法3つと体温を上昇させる方法3つを説明できる。。
重要語句
□血糖
…血液中のグルコースのこと。血糖の量を血糖量、血糖の濃度を血糖値という。
□糖尿病
…糖尿や高血糖を症状とする感性疾患。Ⅰ型糖尿病(インスリン分泌低下)とⅡ型糖尿病(インスリン感受性低下)に分けられる。
授業内容
□体内では血糖を一定に保とうとしている(血糖値=100mg/100mLor0.1%)。
※一部の授業では血糖量を100mg/100mL、血糖値を0.1%と紹介してしまいましたが、実際にはどちらも濃度を表す単位なので血糖値になります。この場を借りて訂正します。
…グルコースは細胞(特に脳)のエネルギー源である。
…血糖量は間脳視床下部とすい臓ランゲルハンス島の2カ所で感知している。
①血糖量が少ない時
…放置すると、昏睡状態に陥り、死に至ることもある。
…血液中のグルコースを増やせば解決する。
→以下の3つの方法を用いる。
アドレナリンを利用
①視床下部で血糖量が少ないことを感知する。
②視床下部から交感神経を通じて副腎髄質に情報を伝える。
③副腎髄質からアドレナリンを分泌する。
④アドレナリンを受容した肝臓でグリコーゲンを分解して、グルコースに変化させ、血糖量を増加させる。
糖質コルチコイドを利用
①視床下部で血糖量が少ないことを感知する。
②視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを分泌する。
③副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンを受容した脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンを分泌する。
④副腎皮質刺激ホルモンを受容した副腎皮質から糖質コルチコイドを分泌する。
⑤糖質コルチコイドを受容した身体の細胞でタンパク質をグルコースに変化させ、血糖量を増加させる。
グルカゴンを利用
①視床下部で血糖量が少ないことを感知する。
②視床下部から交感神経を通じてすい臓ランゲルハンス島A細胞に情報を伝える。
③すい臓ランゲルハンス島A細胞からグルカゴンを分泌する。
④グルカゴンを受容した肝臓でグリコーゲンを分解して、グルコースに変化させ、血糖量を増加させる。
②血糖量が多い時
…放置すると糖尿病になる
…血液中のグルコースを減らせば解決する。
→以下の方法を用いる。
インスリンを利用
①視床下部で血糖量が多いことを感知する。
②視床下部から副交感神経を通じて、すい臓ランゲルハンス島B細胞へ情報を伝える。
③すい臓ランゲルハンス島B細胞からインスリンを分泌する。
④インスリンを受容した肝臓では、グルコースからグリコーゲンを合成する。
④'インスリンを受容した細胞では、血液中のグルコースを細胞内に取り込む。
実際には血糖量の増減に加えて、ホルモンの濃度を感知し、各ホルモンの分泌量も調節される。
※浦沢直樹「MATERキートン」(小学館)では、瀕死の人間にインスリンを注射することで、回復を図ろうとしていた。
□恒温動物は体温を一定に保とうとする。
※体温が高いと、周囲の気温に関わらず行動できる。
…体温は間脳視床下部で感知している。
①体温が低い時…発熱量を増やし、放熱量を減らせばよい。
発熱量を増やす(1)
①視床下部で体温低下を感知する。
②視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを分泌する。
③甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを受容した脳下垂体前葉から甲状腺刺激ホルモンを分泌する。
④甲状腺刺激ホルモンを分泌した甲状腺からチロキシンを分泌する。
⑤チロキシンを受容した体内の細胞は化学反応を促進し、熱を発生させる。
②'視床下部から交感神経を通じて副腎髄質に情報を伝える。
③'副腎髄質からアドレナリンを分泌する。
④'アドレナリンを受容した肝臓でグリコーゲンを分解して、グルコースに変化させる過程で熱を発生させる。
発熱量を増やす(2)
①視床下部で体温低下を感知する。
②視床下部から交感神経を通じて、筋肉に情報を伝える。
③筋肉が収縮し、身震いをする過程で熱を発生させる。
放熱量を減らす
①視床下部で体温低下を感知する。
②視床下部から交感神経を通じて、立毛筋へ情報を伝える。
③立毛筋が収縮し、毛穴を塞ぐことで、熱が逃げていくのを防ぐ。
②'視床下部から交感神経を通じて、毛細血管へ情報を伝える。
③'毛細血管が収縮し、皮膚から離れることで血液が冷やされるのを防ぐ。
上記の他にも、交感神経が働くことで心臓の拍動数が増加する。これは、化学反応を促進するためには、細胞へ多くの物質を供給する必要があるためと考えられる。
②体温が高い時…発熱量を減らし、放熱量を増やせばよい。
発熱量を減らす
①視床下部で体温の上昇を感知する。
②視床下部から副交感神経を通じて、肝臓へ情報が伝わる。
③肝臓で化学反応を抑制し、発熱量を減らす。
②'視床下部から副交感神経を通じて、心臓へ情報が伝わる。
③'心臓の拍動数が減少し、細胞へ物質があまり供給されなくなり、化学反応の抑制につながる。
放熱量を増やす(1)
①視床下部で体温の上昇を感知する。
②視床下部から副交感神経を通じて、立毛筋へ情報を伝える。
③立毛筋が弛緩し、毛穴が広がることで、熱が逃げていく。
②'視床下部から副交感神経を通じて、毛細血管へ情報を伝える。
③'毛細血管が拡張し、皮膚に近づくことで血液が冷やされる。
放熱量を増やす(2)
①視床下部で体温の上昇を感知する。
②視床下部から交感神経を通じて、汗腺へ情報を伝える。
③汗腺から汗が分泌され、気化熱によって熱が奪われる。
2-3 遺伝情報とタンパク質の合成
2-3-1 遺伝子とタンパク質
No.32 タンパク質は生体内のいたるところにあるのだ。
授業の目標
生体内のタンパク質を4つ以上例示できる。タンパク質とアミノ酸の関係を説明できる。
重要語句
□タンパク質
…多数のアミノ酸がペプチド結合によって長く連なった高分子化合物。多くの種類があり、様々な働きを持つ。
□アミノ酸
…アミノ基とカルボキシル基をもつ有機化合物の総称。タンパク質の構成単位。
授業内容
□生体内に多く含まれる物質は、水、タンパク質、脂質、炭水化物、核酸など。
→生体内のタンパク質は様々な場所で働いている。(オレンジの字はタンパク質の名称)
①構造(生物のからだをつくる)
・筋肉(アクチン、ミオシン)
・内臓、腱、皮膚の一部(コラーゲン)
※腱=骨と筋肉をつなぐ部分。アキレス腱など。
・毛(ケラチン)
②機能(生命活動に働く)
・酵素=触媒として働くタンパク質(アミラーゼ、ペプシン)
・赤血球内のヘモグロビン
・抗体=抗原を不活性化するタンパク質(免疫グロブリン)
・ホルモン(アドレナリン、インスリン)
□タンパク質はアミノ酸が多数結合したものが、立体構造をとった物質である。
…生体内のタンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類。
→アミノ酸はペプチド結合によって直鎖状のポリペプチドとなる(一次構造)。
→ポリペプチドがα-ヘリックス構造(らせん状)やβ-シート構造(ジグザグに折れ曲がった構造)といった二次構造をとる。
→さらに、ジスフィルド結合などによって、より複雑な構造(三次構造)をとり、立体構造となる。
→タンパク質によっては三次構造をとったサブユニットが組み合わさって、ひとつのタンパク質として機能する(四次構造)。
…タンパク質の立体構造はアミノ酸配列によって決まる。
→タンパク質の構造や機能はどのアミノ酸をどの順番に並べるかによって決定している。
2-3 遺伝情報とタンパク質の合成
2-3-2 タンパク質の合成
No.33 アミノ酸配列はmRNAにより指定されるのだ。
授業の目標
「翻訳」という語句をRNAの働きに注目して説明できる。。
重要語句
□tRNA
…運搬RNA(transpher RNA)。アミノ酸をリボソームに運ぶ働きを持つRNA。アンチコドンを持つ。
□mRNA
…伝令RNA(messenger RNA)。DNAの塩基配列を写し取り、アミノ酸配列に変換する働きを持つRNA。
授業内容
□アミノ酸配列によって、タンパク質の立体構造は決定する。
…生体内のタンパク質に用いられるアミノ酸は全部で20種類。
…アミノ酸は自動的に動かない。
□アミノ酸はtRNAというRNAによって運ばれる。
|RNA(ribo nucleic acid、リボ核酸)|
・核酸の一種(DNAも核酸)
・リボースを糖とするヌクレオチドが多数結合した1本鎖構造をとる。
※ヌクレオチド=リン酸+糖(リボース)+4種類のうち1つの塩基
・A(アデニン)
・U(ウラシル)
・G(グアニン)
・C(シトシン)
→tRNAは特定のアミノ酸を運ぶ。
□アミノ酸配列はmRNAの塩基配列により指定される。
→DNAの塩基配列をもとにmRNAの塩基配列はつくられる。
・mRNAの連続する塩基3個(=コドン)でアミノ酸1個を指定する。
・コドンに相補的に結合する連続する塩基3個(=アンチコドン)を持つtRNAがmRNAに結合していく。
→mRNAの塩基配列がアミノ酸配列に変換される=翻訳
①mRNAの塩基に相補的に結合できる塩基を持つtRNAが結合していく。
②tRNAに運ばれたアミノ酸同士がペプチド結合により次々に結合する。
③結合したアミノ酸がtRNAから離れ、ポリペプチドとなる。
④ポリペプチドが立体構造をとり、タンパク質が合成される。
2-1 遺伝情報とDNA
2-1-3 DNAの構造
No.34 アミノ酸配列はもともとDNAの塩基配列で決まるのだ。
授業の目標
DNAの二重らせん構造が遺伝子の本体にふさわしい理由を説明できる。
重要語句
□DNA
…デオキシリボ核酸(DeoxyriboNucleic Acid)。ヌクレオチドの糖がデオキシリボースであり、二重らせん構造をとる。遺伝子の本体。
□相補性
…A(アデニン)とT(チミン)(RNAではU(ウラシル))間、および
G(グアニン)とC(シトシン)間のみで塩基間の結合がみられる性質。
授業内容
□一本鎖構造であるRNAは不安定な物質である。
…ヌクレオチドの塩基は紫外線や放射線によって変化することがある。
…仮に塩基が変化しても、正しく修復するのは難しい。
□DNAは2本のヌクレオチド鎖が二重らせん構造をとった安定した物質である。
|DNA(デオキシリボ核酸)|
・核酸の一種(RNAも核酸)
・デオキシリボースを糖とするヌクレオチドが多数結合する。
※ヌクレオチド
=リン酸+糖(デオキシリボース)+4種類のうち1つの塩基
・A(アデニン)
・T(チミン)
・G(グアニン)
・C(シトシン)
・2本のヌクレオチド鎖の内側で塩基が相補的に結合している。
→AとT、GとCが相補的に結合する。
・ヌクレオチド鎖がらせんを描くようになるため、二重らせん構造をとる。
□DNAの二重らせん構造によって正確な複製が可能になる。
…体細胞分裂時にはDNAの複製が行われる。
…DNAの複製は半保存的複製によって行われる。
|半保存的複製の過程|
①DNAの塩基対の結合が外れ、二重らせんがほどける。
(2本のヌクレオチド鎖となる)
②ヌクレオチド鎖の塩基に相補的な塩基を持つDNAのヌクレオチド(図46水色背景)が結合していく。
③ヌクレオチド同士が結合して、複製が完了する。
2-3 遺伝情報とタンパク質の合成
2-3-2 タンパク質の合成
No.35 DNAの塩基配列がmRNAに転写されるのだ。
授業の目標
DNA非鋳型鎖の塩基配列とmRNAの塩基配列の同じ点・違う点を説明できる。
重要語句
□遺伝子
…生物の遺伝情報を担う因子。その実体はDNAであるが、遺伝子として働く部分は染色体を構成するDNAのごく一部にすぎない。
□鋳型
…相補的塩基対の形成による遺伝情報の伝達において、その元になる核酸の鎖のこと。
□転写
…DNAの一方の鎖を鋳型として相補的なRNAを合成する過程。
授業内容
□DNAの塩基配列のうち、遺伝子となる部分はほんのわずかしかない。
…ヒトゲノム計画によって明らかにされたヒトの遺伝子数は約22,000個と言われている。
…遺伝子となる部分は全体の1.5〜3%と言われている。
→さらに、細胞ごとに発現する遺伝子はその一部となる。
□DNAの塩基配列の必要な部分を転写することでmRNAを合成する。
|転写の過程|
①DNAの二重らせん構造がほどけ、2本のヌクレオチド鎖となる。
→2本のヌクレオチド鎖のうち、転写に用いられる方を鋳型鎖、用いられない方を非鋳型鎖という。
→二重らせん構造がほどけるのは、転写に必要な部分のみである。
②DNA鋳型鎖の塩基に相補的に結合する塩基を持つRNAのヌクレオチドが結合していく。
DNA鋳型鎖 A T G C
| | | |
mRNA U A C G
③RNAのヌクレオチド同士が結合して、DNAから離れて、mRNAになる。
…①〜③の過程は核内で行われる。
…転写終了後、合成されたmRNAは核外へ出て、翻訳に入る。
2-3 遺伝情報とタンパク質の合成
2-3-3 遺伝子の発現
No.36 ゲノムにはすべての遺伝子が含まれているのだ。
授業の目標
iPS細胞に全能性がある理由について説明できる。
重要語句
□ゲノム
…単相(n)の細胞にあるDNAの全情報。生物のもつ遺伝情報全体を意味する。
□分化
…多細胞生物において、各細胞が特有の遺伝子発現を行うことによって、特有の形態と機能をもつようになること。
授業内容
□ヒトを含め、多くの生物のゲノムが解読されている。
|ゲノム|
生殖細胞(精子・卵)の核内のDNA+ミトコンドリアのDNA
・通常の生物(複相、2nと呼ばれる)はゲノムを2セット持っている。
・ゲノムの遺伝情報があれば、生物に必要なタンパク質はすべてつくれる。例えば、ミツバチのオスは単相である。
□ゲノムの全遺伝子のうち、ある細胞で発現する遺伝子はその一部である。
→遺伝子発現によってタンパク質が合成される。
→そのタンパク質によって、細胞が特定の形態や機能を持つようになる(=分化)。
※細胞はその場所や細胞質内の物質の濃度によって、ある程度分化の方向性が決まっている。
※一度分化した細胞は、原則再分化できない。
□2007年、京都大学の山中伸弥博士らによってiPS細胞がつくられた。
|iPS細胞のつくり方|
①一度分化した細胞を取り出し、培養(シャーレ内で細胞を増殖させること)する。
②培養した細胞に4種類の遺伝子を導入する。
※山中博士らは、当初、導入したい遺伝子を持ったウイルスを培養した細胞に感染させる形で、導入した。
③導入した細胞を培養していくと、全能性(どんな細胞にでも分化する能力)を持つiPS細胞ができた。
|iPS細胞の特徴|
①全能性をもつ。
②受精卵等からつくるわけではないので、倫理的な制約が少ない。