授業の目標
地球上には多様な生物がいる事を知り、その分類の一例を知る。
重要語句
□分類
同じような特徴を持つ生物をまとめてグループ化すること。
生物の分類における最も基本的な単位。同種の個体間でのみ子孫を残せる。
授業内容
□地球上には多様な生物がいる。「生物」の定義はNo.2に譲るが、動物も植物も菌類も生物である。
□多様な生物にはそれぞれ名前がついている。ヒトは生物を分類するために、名前をつけた。日本では、国内共通の生物名として和名が用いられる。これは、カタカナで書く事になっている。ちなみに、世界共通の生物名としては学名がある。これは属名+種小名からなり、ラテン語(もしくはラテン語っぽい単語)で書かれる。
□分類の基準は変化してきた。昔は外見で区別してきたが、現在ではDNAの塩基配列を中心にした分類基準ができつつある。
□分類の一例として五界説を挙げる。これは、生物を5つのグループ(=界)に分類するものである。
①動物 …主に摂食により栄養を取る多細胞生物
例)イヌ、ライオン、マグロ…
②植物 …光合成を行う多細胞生物
例)セイヨウタンポポ、ソメイヨシノ
③菌類 …からだの表面から栄養をとる生物
例)ベニテングダケ、アオカビ
※菌類には単細胞生物と多細胞生物がいる。
④原生生物…①、②、③、⑤以外の生物
例)ボルボックス、ゾウリムシ
⑤原核生物…原核細胞でできている生物
例)大腸菌、イシクラゲ
授業の目標
進化という現象の意味を捉え、生物の共通点を挙げられる。
重要語句
□進化
生物が世代を重ねるうちに変化し、種を増やしてきた過程。
授業内容
□なぜ、現在多様な生物が地球上にいるかは、進化によって説明できる。旧約聖書には、神(主)が多様な生物を創造したことになっているが、あまり科学的でない。
□生物の多様性は進化によって生じた。進化をイメージ化したのが図1である。世代を重ねるうちに遺伝子が変化すると、遺伝子によって決定される形質(生物が持つ形や性質)も変化する。
□進化が起こったと仮定すると、地球上の生物は最初は1種類の生物であったと考えられる。これを共通祖先という。共通祖先がどのような生物であったかはまだはっきりとはしていないが、この生物の特徴を現在の生物は受け継いでいると考えられる。つまり、共通祖先の特徴こそが、生物の共通点でもある。
①からだが細胞でできている。
②体内もしくは細胞内で化学反応を行う(=代謝)。
③自分と同じ遺伝子を持つ個体を次世代に残す(=自己複製)。
※あくまで次世代に残したいのは自分の種ではなく、自分の遺伝子を持つ個体である。
授業の目標
細胞の構成要素を理解する。
重要語句
□細胞膜
細胞の内外を隔て、物質の出入りを調節する膜。
□細胞質
細胞膜に囲まれた部分のうち、核と細胞液を除いたものすべて。
※細胞質は細胞膜と細胞質基質と核以外の細胞小器官から構成される。
□細胞小器官
形態的・機能的に独立した細胞内の様々な構造体。核、ミトコンドリア、葉緑体など。
授業内容
□中学校では細胞には核がある、と学習する。しかし、実際には核がない細胞もある。すべての細胞に共通する要素を探していく。
□「細胞は生物の最小単位である」という考え方を細胞説という。細胞説によれば、ウイルスは生物ではない。ウイルスはタンパク質の殻とDNAからできており、細胞構造はない。さらに、化学反応も行わないため、No.2で登場した生物の共通点のうち、①②を満たしていない事になる。
□すべての細胞に共通する構成要素は3つある。(図2)
①細胞膜 …細胞内外を仕切る膜
→細胞膜によって、細胞は「1個」でいられる。生物が持つ自己境界性を細胞膜は提供した。
②細胞質基質…細胞内の液体成分
→液体成分とは、実際には水に様々な物質が溶けたものである。水は温度変化が小さく、細胞内は安定した環境を保つ事ができる。さらに、水に溶けた様々な物質は互いに影響し合い、化学反応を起こしやすい。したがって、細胞質基質は化学反応(代謝)の場となる。
③DNA …遺伝子の本体となる物質
→遺伝子とは形質(生物の形や形質)を決める情報である。DNAの塩基配列の一部が遺伝子の正体である。
→DNAによって生物の形質が決まるため、DNAさえ複製できれば、個体をつくることにもなる。これにより、生物は自己複製能力を手にした。
□細胞によっては(主に真核細胞だが)、上記①〜③以外のものを持つ場合もある。
④細胞壁 …細胞膜の外側にある細胞を保護する構造
⑤細胞小器官…細胞内の構造体
授業の目標
原核細胞と真核細胞の違いを理解する。
重要語句
□原核細胞
核膜がなく、細胞小器官の分化もない原始的な細胞。
□原核生物
原核細胞からなる生物。細菌類とラン藻類が該当する。
※授業で紹介したイシクラゲはラン藻類。細菌類とは違い、光合成ができる。
□真核細胞
核膜で囲まれた核を持ち、細胞小器官の分化が見られる細胞。
□真核生物
真核細胞からなる生物。細菌類・ラン藻類を除くほとんどの生物が該当する。
授業内容
□細胞を大きく分類すると、原核細胞と真核細胞がある。原核細胞は、次のような特徴を持つ。(図3)
①DNAが細胞質基質中に存在している。
②細胞壁を持つ。
③細胞小器官を持たない。
□真核細胞は、次のような特徴を持つ。(図4)
①DNAは核の中に存在している。
※核は核膜で囲まれた細胞小器官
②細胞小器官を持つ。
□真核細胞において、核は重要な役割を持つ。内部にDNAが入ってるため、細胞の生命活動は核によって調節されている。したがって、核がなくなってしまうと、細胞は死んでしまう。
□どの細胞小器官を持つかは細胞の種類によって異なる。(図5)
授業の目標
細胞の分化について知るとともに、単細胞生物と多細胞生物の違いを理解する。
重要語句
□単細胞生物
一生を通じて、1個の細胞で生命活動のすべてを行う生物。
□多細胞生物
1個体が多数の分化した細胞からなる生物
□分化
多細胞生物において、各細胞が特有の遺伝子発現を行うことによって、特有の形態と機能を持つようになること。
授業内容
□単細胞生物は、1つの細胞で1個体となる生物である。1つの細胞だけで、摂食、細胞内の液体の濃度調節、運動等を行う必要がある。そのため、真核細胞でできている単細胞生物(例:ゾウリムシ・ミドリムシなど)は特殊な細胞小器官を持つものもいる。
特殊な細胞小器官の例
①食胞(消化・吸収)
②収縮胞(細胞内の濃度調節)
③繊毛・べん毛(運動)
□多細胞生物は、多くの分化した細胞が集まって1個体となる生物である。分化とは、細胞が特定の形や機能を持つ事である。細胞の一生は図6のような過程をたどる。
□一度分化した細胞は、再分化できない。特殊な方法を用いて、これを可能にする技術が現在では開発されている。
iPS細胞…遺伝子を組み込む事で、一度分化した細胞をどんな細胞にでも分化できる細胞にリセットした細胞の事。京都大学の山中伸弥教授らが開発した。
□単細胞生物はすべての原核生物と一部の真核生物が該当する。
□多細胞生物は一部の真核生物が該当する。
□原核生物はすべて単細胞生物である。
□真核生物には単細胞生物と多細胞生物がいる。
授業の目標
触媒として働く酵素の性質を理解する。
重要語句
□酵素
細胞内で合成され、タンパク質を主成分とする生体触媒。
□触媒
化学反応の前後で自身は変化せずに、化学反応を促進する物質。
授業内容
□生体内では様々な化学反応が行われている。通常、化学反応には時間がかかる。化学反応の時間を短縮するのは主に2つの方法がある。
①温度を高くする。
…化学反応の速度は温度が高いほど速くなる。
②触媒を利用する。
□生体内では、酵素が触媒の役割を果たす。酵素には次のような性質がある。
①主成分はタンパク質である
※タンパク質は、アミノ酸という物質が多数結合し、立体構造をとった物質である。
②熱やpHに弱い
→高温にすると、タンパク質の立体構造が変化し、酵素としての機能を失う。
→酸やアルカリの中では、タンパク質の立体構造が変化し、酵素としての機能を失う。
③特定の基質にのみ作用する…基質特異性
例)アミラーゼ(唾液に含まれる消化酵素)はアミロース(デンプン)の分解を促進する。
→肉を何十回噛んでも、ご飯のような甘さは決して出ない。
授業の目標
代謝には同化と異化があり、それぞれでエネルギーがどのように出入りするかを理解する。
重要語句
□代謝
生体内における化学反応の全体。その多くは酵素によって促進される。
□同化
エネルギーを使って単純な物質から複雑な物質を合成する反応。
□異化
複雑な物質を単純な物質に分解してエネルギーを取り出す代謝の過程。呼吸や発酵など。
授業内容
□エネルギーは仕事をする能力である
※仕事とは物体に力が加わり、変化すること(運動、熱など)
□生命活動は代謝(生体内の化学反応)によって成立する
…様々な物質とエネルギーが必要
□物質は、化学結合にエネルギーを蓄えている。
→化学結合が多い = エネルギーが多い
→化学結合が少ない= エネルギーが少ない
□同化はヒトの体内でも起こる
例)牛肉(タンパク質)を消化によってアミノ酸する。そのアミノ酸(=簡単な物質)にをもとにして、ヒト用のタンパク質(=複雑な物質)をつくる。
授業の目標
2通りの有機物の摂取方法を知る。また、ATPとエネルギーの関係を説明できる。
重要語句
□独立栄養生物
炭酸同化を行うことができる生物。緑色植物や一部の細菌など。
□従属栄養生物
炭酸同化を行うことができず、独立栄養生物が合成した有機物を直接または間接に摂取し利用する生物。
□ATP
アデノシン三リン酸(Adenocine TriPhosphate)。ADPとリン酸に分解する時、エネルギーが放出され、生命活動に利用される。
授業内容
□異化を行うために生物は有機物を必要としている
→①有機物を自らつくり出す生物 = 独立栄養生物
…二酸化炭素からつくる(炭酸同化)
→②他の生物がつくったものを摂取 = 従属栄養生物
…摂食等により摂取
□有機物を分解すればエネルギーが得られる
→エネルギーはすぐ別の形(主に熱)に変化してしまう
↓
ATPの高エネルギーリン酸結合に蓄えておく
□ATPの高エネルギー結合が切断され、ADPとリン酸になる
□異化により発生した化学エネルギーはADPとリン酸の結合部分(=高エネルギーリン酸結合)に蓄えられる。
授業の目標
呼吸の仕組みを説明できるようにする。
重要語句
□呼吸
細胞内で酸素を使って有機物を分解し、取り出したエネルギーをATPに蓄える過程。
□呼吸基質
呼吸によって分解される有機物。グルコースなどの炭水化物のほかに、脂肪やタンパク質も用いられる。
□ミトコンドリア
呼吸を行う細胞小器官。独自のDNAをもつ。
授業内容
□生物は有機物を分解して、エネルギーを取り出す(=異化)
①酸素を用いずに分解する 例)解糖、発酵 など
→あまり分解できない(乳酸、アルコールなど)
→できるATPは少ない
②酸素を用いて分解する 例)呼吸(=内呼吸、好気呼吸)
→最終的に二酸化炭素と水にまで分解する
※二酸化炭素は呼気として排出される
※水は体内で再利用される
→できるATPは多い(解糖の19倍)
□呼吸に用いる有機物(=呼吸基質)は、炭水化物>脂肪>タンパク質
□呼吸基質は細胞質基質→ミトコンドリアの中で分解されていく
①解糖(細胞質基質内)
…グルコースが細胞質基質内の酵素によってピルビン酸に分解される
→少量のATPができる(呼吸全体の2/38)
②クエン酸回路(ミトコンドリア内)
…ピルビン酸がミトコンドリア内の酵素によって、分解が進行し、二酸化炭素ができる
→少量のATPができる(呼吸全体の2/38)
③電子伝達系(ミトコンドリア内)
…クエン酸回路での分解産物(分解によってできたもの。この場合は、二酸化炭素以外)と取り入れた酸素によって、ミトコンドリア内の酵素によって、分解が進行し、水ができる
→多量のATPができる(呼吸全体の34/38)
授業の目標
光合成の仕組みを二酸化炭素が固定されることを意識して説明できるようにする。
重要語句
□光合成
緑色植物や光合成細菌などが行う光エネルギーを用いた炭酸同化。光エネルギーの吸収はクロロフィルなどの光合成色素が行う。
□クロロフィル
光合成の過程で光エネルギーを吸収する役割を持つ色素。真核生物では葉緑体に、原核生物では細胞質にそれぞれ含まれる。
□葉緑体
光合成を行う細胞小器官。独自のDNAをもつ。
授業内容
□光合成は空気中の二酸化炭素から、光エネルギーを用いて、有機物を合成する過程である(=炭酸同化)
※植物の場合、二酸化炭素は葉の裏側にみられる気孔から吸収している。
※光エネルギーはそのままでは使えないので、葉緑体で化学エネルギーに変換する(→ATPをつくる)。
化学エネルギー=原子間の結合に含まれるエネルギー
※有機物はグルコースや、それをもとにつくられるデンプン、スクロースなどを指す。
□葉緑体のチラコイドで、光エネルギーが化学エネルギーに変換される。
…チラコイド内にはクロロフィル(緑)やキサントフィル(黄)などの光合成色素がある。
【チラコイド内での反応過程 (クロロフィルを例に)】
①クロロフィルが光エネルギーを吸収する
※特に赤色や青紫色の光を吸収
②クロロフィルが活性化する
③活性化したクロロフィルが元に戻る際に水を分解し、発生した電子によってATPがつくられる。
※この水の分解によって酸素が発生する
□葉緑体のストロマで、二酸化炭素が固定されて有機物となる
【ストロマ内での反応過程】
④取り入れた二酸化炭素から③でできたATPをもとに、グルコースなどの有機物をつくる(=カルビン・ベンソン回路)
□光合成によってできた有機物は呼吸基質として用いられたり、からだの一部になったりする。
授業の目標
細胞内共生説の概要と、その証拠について説明できる。
重要語句
□細胞内共生説
ミトコンドリアと葉緑体は、それぞれ独立した原核生物であったものが単細胞生物に共生することによって成立したとする説。
【注意】一部クラスでは「真核生物に共生…」とした。後述するが、核膜の形成と好気性細菌の共生はどちらが先であったかは明らかでない。もしも核膜の形成が後だったとすると。好気性細菌は「原核細胞」と共生したことになる。したがって、どちらが先であったとしても、通じるように、「単細胞生物に共生…」とした。
□好気性細菌
酸素の存在下で正常に生育する細菌類。
【注意】細菌類はすべて原核生物である。
□シアノバクテリア
光合成を行う原核生物のうち、酸素を放出するもの。
授業内容
□共通祖先はシンプルな構造・機能だったと考えられる
【現在考えられている共通祖先の特徴】
①小さな原核生物(原核細胞)だった
②酸素を用いない異化を行っていた
③従属栄養生物だった
→やがて、多様に進化していった
①大きな真核生物(真核細胞)になった
②酸素を用いて呼吸を行う好気性細菌になった
③光合成を行うシアノバクテリア(=ラン藻)になった
□巨大な真核細胞は、他の原核生物を細胞内に取り込み、細胞小器官としていった(=細胞内共生説)
①細胞内に取り込まれた好気性細菌は、ミトコンドリアとなった
②細胞内に取り込まれたシアノバクテリアは、葉緑体となった
授業の目標
生態系の構成要素を理解し、どのように影響し合っているかを説明できる。
重要語句
□環境
生物に影響を及ぼす外界の要素のすべて。生物的環境と非生物的環境に大別される。
□生態系
ある地域に生息する生物とそれを取り巻く非生物的環境を一つのまとまりとしてとらえたもの。
□環境形成作用
生物が非生物的環境に影響を与え、これを変化させること。
授業内容
□1頭のツバメシジミ(チョウの1種)の周囲には様々な環境がある。
①生物的環境…同種または別種の生物すべて
例)ツバメシジミ、シロツメクサ、スズメ、ヒトなど
②非生物的環境…その個体の周囲にある生物以外の要素
例)大気、土壌、日光、水、温度など
□ある地域に生息する生物を1つのまとまり(=生物群集)としてとらえる。
→ 生物群集 + 非生物的環境 = 生態系
□非生物的環境は生物に影響を与える(=作用)。
(作用の例)
・気温が上昇すると、ソメイヨシノが開花する。
(温度が開花という生命活動に影響を与えた)
・水中の酸素が減少して、魚類が死ぬ。
(酸素濃度が魚類の生命活動に影響を与えた)
□生物も非生物的環境に影響を与える(=環境形成作用、反作用)。
(環境形成作用(反作用)の例)
・木が成長して、林床(森林の地面に近い場所)に日光が当たりにくくなる。
(木の成長が結果的に日光を遮るという影響を与えた)
・ヒトが化石燃料を燃やした結果、二酸化炭素濃度が上昇した。
(ヒトの活動が二酸化炭素濃度に影響を与えた)
授業の目標
生物の「食う—食われるの関係」を理解し、エネルギーの流れという観点で説明できる。
重要語句
□分解者
生物の遺体や排出物を分解する菌類や細菌類。
□食物網
実際の生態系における食物連鎖が複雑に入り組んだ網目状の状態。
□栄養段階
食物連鎖を構成する生物を有機物の生産と消費の観点によって位置づけたもの。
授業内容
□生態系を構成する生物は3種類に分類される。
①生産者…光合成によって自ら有機物をつくる生物
例)陸上生態系…植物 など
水界生態系…植物プランクトン、藻類 など
②消費者…生産者から直接もしくは間接的に有機物を得る生物
例)陸上生態系…動物 など
水界生態系…動物、動物プランクトン など
③分解者…枯死体や遺体、排出物といった有機物を無機物に分解することによりエネルギーを得ている生物
例)陸上生態系…菌類、細菌類 など
水界生態系…細菌類 など
・栄養段階ごとに生物量や個体数に注目して並べてみると、栄養段階が高いものほど少なくなる。
→その構造から生態ピラミッドと呼ばれる。
・実際の生態系では食物連鎖が絡み合い、網目状の構造(=食物網)になっている。
□エネルギーは生態系内を循環しない
→生態系外へ熱として逃げていく。
授業の目標
生態系内における炭素・窒素の循環経路を理解する。
重要語句
□根粒菌
マメ科の植物の根に根粒を形成して、その細胞に共生する細菌。
□窒素固定
大気中の窒素をアンモニウムイオンに変換する過程。窒素固定細菌や一部のシアノバクテリアなどが行う。
□窒素同化
生物がアンモニウムイオンや硝酸イオンからタンパク質や核酸などの有機窒素化合物を作る働き。
授業内容
□炭素原子 Cは生態系内を循環している。
※炭素原子は有機物の骨格として重要な原子である。
①空気中にはCO2の状態で存在(約0.03-0.04%)
※CO2は無機物である
②空気中のはCO2は、生産者の光合成(炭酸同化)によって生物体内へ有機物として取り込まれる。
③生産者がつくった有機物は食物連鎖によって、消費者へ有機物の形で移動していく。
④生産者・消費者は呼吸によって有機物をCO2に変えて、空気中へ排出する。
⑤生産者・消費者の遺体や排出物(=有機物)は分解者によって無機物に変えられる。その一部が空気中のCO2になる。
⑥近年はヒトによる化石燃料(石油・石炭)の燃焼に伴って、空気中のCO2が増加傾向にある。
□窒素原子 Nは生態系内を循環している。
※窒素原子は有機窒素化合物(タンパク質や核酸(DNA・RNA))の材料として重要な原子である。
①空気中には窒素(N2)の形で存在している(約79%)。
②窒素固定細菌(根粒菌・アゾトバクターなど)は、空気中の窒素をアンモニウムイオンに変える窒素固定を行う。
③生物体内ではタンパク質やDNAといった有機窒素化合物の形で存在している。
④生物の遺体・排出物(有機窒素化合物が含まれる)を分解者は分解して、アンモニウムイオンにする。
⑤分解者によってつくられた土壌中のアンモニウムイオンはさらに他の細菌の働きによって亜硝酸イオンや硝酸イオンに変化する。
⑥土壌中に含まれるこのような窒素原子を含むイオンを植物は根から吸収し、有機窒素化合物に変える(=窒素同化)。
⑦植物がつくり出した有機窒素化合物は食物連鎖の過程で、消費者へと移動していく。
⑧脱窒素細菌は土壌中の硝酸イオンを窒素に変えて空気中に放出する(=脱窒)。
⑨近年はヒトのつくり出した化学肥料によって、土壌中の窒素が増加傾向にある。
【参考資料】
授業の目標
植物の3つの器官を知るとともに、草本植物と木本植物の違いを説明できる。
重要語句
□草本植物
茎が木質化することがほとんどなく、木本植物のように堅くならない植物。
□木本植物
茎の組織が木質化して堅くなり、幹や枝が冬でも枯れることはない植物。
□同化器官
光合成が行われる植物の器官。多くの植物で葉がこれに相当する。
授業内容
□植物は光合成を行い、陸上で生育する多細胞生物である。
・生きていく上で必要な有機物は光合成によって得る。
・重力の影響を軽減できる水中と比べて、陸上では自立できるような器官(茎・根)が必要になる。
□植物の器官(栄養器官)は葉・茎・根の3つである。
・花は生殖器官であるため、今回は除外。
①光合成(炭酸同化)により、有機物をつくっている。
②蒸散により水を植物体から排出する。
①物質の輸送経路になる。
・道管…根から葉へ土壌中の水分や無機窒素化合物を運ぶ。
・師管…葉から根へ光合成でつくった有機物を運ぶ。
②植物体の支持にはたらく。
・肥大成長することにより、植物体を強固にする。
※形成層では、体細胞分裂が盛んに行われる。
・細胞壁を厚くすることで細胞を強固にする。
→さらに細胞壁にリグニンを沈着させ、木質化したのが木本植物。
→木質化しないのが草本植物。
③光獲得競争のため、伸長成長する。
①土壌中の水分や無機窒素化合物(アンモニウムイオンなど)、無機塩類(カリウムなど)を吸収する。
②植物体の支持にはたらく。
授業の目標
教科書P.110-図5が説明できる。植物の水の移動に関わる3つの力を説明できる。
重要語句
□見かけの光合成速度
光合成を行っている植物における二酸化炭素吸収速度の測定値。
□光補償点
光合成速度と呼吸速度が等しい時の光の強さ。
□光飽和点
光合成速度がそれ以上増えなくなる時の光の強さ。
授業内容
□植物は呼吸と光合成の両方を行っている。
・光合成は光の当たっている時(昼)のみ行う。このとき、二酸化炭素が吸収される。
・呼吸は1日中(昼+夜)行う。このとき、二酸化炭素が排出される。
□光の強さ(単位:ルクス)と二酸化炭素吸収速度(単位:mgCO2/cm2・時)の関係を表した曲線(図21)を「光ー光合成曲線」という。
※光合成の過程では二酸化炭素が吸収される。そのため、光合成速度は二酸化炭素の吸収速度で表される。
□光合成速度は光の強さによって変わる。
①光が強くなるほど、光合成速度は大きくなる。
②ある値以上の光の強さでは、光合成速度は一定となる。
→このような値を光飽和点という。
□呼吸速度は光の強さに関係なく一定である。
【光ー光合成曲線に関わる計算問題】
問題1 図21における呼吸速度を計算しなさい。
問題2 図21において4ルクスの時の光合成速度を計算しなさい。
問題3 図21において16ルクスの時の光合成速度を計算しなさい。
問題4 図21において24ルクスの時の光合成速度を計算しなさい。
解答1
昼間は光合成と呼吸の両方を行っているため、計算しにくい。したがって、光合成の影響がない暗黒下(=0ルクス)での二酸化炭素の吸収速度(実際には排出速度になる)を見ればいい。
グラフより、呼吸速度は、
|-30|=30[mgCO2/cm2・時]
解答2
グラフ上の二酸化炭素吸収速度は見かけの光合成速度になる。この時、「呼吸速度=光合成速度」となることに注目すれば、光合成速度が得られる。この時の光の強さ(4ルクス)を光補償点という。
グラフより、光合成速度は、
0+30=30[mgCO2/cm2・時]
解答3
光合成速度は、見かけの光合成速度に呼吸速度を加えた数値となる。
グラフより、光合成速度は、
90+30=120[mgCO2/cm2・時]
解答4
光合成速度は、見かけの光合成速度に呼吸速度を加えた数値となる。
グラフより、光合成速度は、
150+30=180[mgCO2/cm2・時]
□光補償点・光飽和点は植物によって異なる。
①陽生植物は光補償点・光飽和点ともに大きい。
→ハイリスク・ハイリターンな生活
陽生植物に3ルクスの光を当て続けた場合、呼吸速度が光合成速度を上回るため、有機物の生産が間に合わず、枯死する。
陽生植物に20ルクスの光を当て続けた場合、光合成速度が呼吸速度を大きく上回るため、大きく成長できる。
②陰生植物は光補償点・光飽和点ともに小さい。
→ローリスク・ローリターンな生活
陰生植物に3ルクスの光を当て続けた場合、光合成速度がかろうじて呼吸速度を上回るため、枯死することはない(成長もほとんどしないが)。
陰生植物に20ルクスの光を当て続けた場合、光合成速度が呼吸速度を上回るため、成長はできる。ただし、陽生植物よりは生長量は少ない。
□植物が給水するには3つの力が必要になる。
①根では根圧によって、水を茎の方へ押し上げる。
②茎では凝集力(水分子同士が互いに引き合う力)によって、道管を上昇していく。
③葉では蒸散による吸水力によって、茎から葉へ水が入ってくる。
授業の目標
森林の階層構造はどのような植物によって成立しているか、説明できる。
重要語句
□優占種
植生を構成する植物の中で個体数が最も多く、最も広い空間を占める種。その植生を特徴づける種。
□林冠
森林の最上層で太陽光を直接に受ける高木の枝葉が繁茂する部分。
□林床
森林の地表面。林冠によって太陽光が遮られるため、耐陰性の強い植物が生育する。
授業内容
□ある場所に生育する植物の集団を植生という。
・植生を代表する植物を優占種という。優占種によって、その植生の外観である相観は決定する。
・植生はその土地の気温・降水量の影響を大きく受ける。
・降水量によって世界の植生は大きく3つに分類される。
①荒原(降水量が少ない)
植物はほとんど生育しない。
例)ツンドラ、砂漠
②草原(降水量がそれほど多くない)
優占種は草本植物である。
例)ステップ、サバンナ
③森林(降水量が多い)
優占種は木本植物である。
例)熱帯多雨林、照葉樹林 など
□森林(主に原生林)は階層構造をとっている。
・人工林は単純な構造となる。
・林冠では光が多く当たるため、光合成が盛んに行われる。
・高さが低くなるにつれて、光の強さはどんどん弱くなる。
・林床では光も弱く、陰生植物が多く生息する。
授業の目標
植生遷移を一次遷移と二次遷移の違いに注目して説明できる。
重要語句
□陽樹
生育に強い光を必要とする樹木。遷移の初期に出現・拡大するが、林床での生育には適さず、やがて陰樹と交代する。
□陰樹
林床など弱い光の環境下でも生育できる樹木。遷移が進んだ森林に出現し、やがて極相林を形成する。
□ギャップ
老化や災害などによって大木が倒れ、森林に空間が生じた状態。
授業内容
□植生が時間とともに変化していく過程を遷移(サクセッション)という。
・裸地から始まる遷移を一次遷移という。
・土壌が形成されているところから始まる遷移を二次遷移という。
→二次遷移の方がかかる時間は短い。
□乾性遷移の一次遷移は以下のように進行する。
①火山の噴火、人為的要因によって裸地が形成される。
②裸地に地衣類やコケ植物が侵入してくる。
(右写真はコンクリートの隙間に生育している地衣類orコケ植物)
③地衣類やコケ植物の遺体が蓄積することにより、土壌が形成し始める。
④土壌中に水分や栄養塩類(無機窒素化合物やカリウム、リンなど)が増加してくる。
⑤草本植物が侵入し、草原が形成される。
※この時に侵入する植物を先駆植物(パイオニア植物)という。
⑥成長の早い低木が侵入し、低木林が形成される。
…林床はまだ明るいため、陽生植物の種子が発芽・成長することが可能。
⑦陽樹が成長し、陽樹林が形成される。
…林床が暗くなってくるため、陽樹の若木は成長しにくい。
…陰樹は成長することが可能。
⑧陰樹が成長してきて、混合林(混交林)が形成される。
⑨陰樹が優占種となり、陰樹林が形成される。
…林床では、陰樹の若木のみが成長できるようになる。
→これ以上、遷移は進行しない状態=極相(クライマックス)となる。
⑩老齢、台風、伐採などにより、陰樹が倒れると、ギャップが形成される。
→ギャップでは陽樹が成長することもある。
→やがて、再び極相林になる。
授業の目標
体液の分類を理解し、恒常性と体液の関わりが説明できる。
重要語句
□体液
多細胞動物の体内の液体。脊椎動物では、血液・組織液・リンパ液に分けられる。
□恒常性
多細胞動物において、外部環境が変化しても、体内環境は生命活動に適した一定の範囲に保たれるしくみ。ホメオスタシスともいう。
□体内環境
血液・組織液・リンパ液など、細胞や組織を取り巻く体液の状態。
授業内容
□ヒトのからだの60%は水分でできている。
→例)体重60kgのヒトの体内には36Lの水が存在する。
→そのうち24L(からだ全体の40%)は細胞内液(細胞内に存在する液体、細胞質基質)として、12L(からだ全体の20%)は細胞外液として存在している。
□水は生物にとって都合のいい性質を持っている。
①比熱が大きい。
※比熱=単位質量の物質の温度を単位温度だけ上げるのに必要な熱量
→水は温度変化しにくい。
②溶媒としての機能を持つ、
→様々な物質を溶かすことができる。
→化学反応の場となりやすい。
□多くの細胞はからだの内部(体内)に存在し、体液に浸っている。
→体外は外界と接している部分。
→体内とは、外界と接していない部分。
→皮膚の細胞は外界と接している。
→胃の内壁は外界と接している。
→体腔は外界と接していない。
たとえば魚をさばく際に、腹側から包丁を入れて切り開き、腸などを取り出すが、その跡には鰓の後ろから尻ビレの前まで続く空洞ができる。つまり、この空洞に諸内臓が収まっていたわけであり、この空洞を体腔という。(Wikipediaより引用)
→体液が存在するのは体内である。
…体外に分泌される液体は体液ではない。
例)汗、鼻水、消化液、涙、など
→体液は細胞にとっての環境に相当する(=体内環境)
□体液は血液、リンパ液、組織液の3種類である。
①血液…体液のうち、血管を通り、全身の細胞に栄養分や酸素を運搬したり、二酸化炭素や老廃物を運び出す働きをするもの。
②リンパ液…体液のうち、リンパ管内を流れるもの。組織液の一部がリンパ管に入り、リンパ液となる。
③組織液…体液のうち、組織の細胞間を満たすもの。毛細血管から染み出た血しょうに由来する。周辺の細胞に必要な成分を供給する。
□体液によって細胞は恒常性と様々な物質を手に入れた。
①温度変化がしにくいので、細胞を一定の範囲に保ちやすい。
…恒常性
②様々な物質を溶かせるので、細胞に物質が供給できる。
…逆に不要な物質も体液に渡せる。
授業の目標
血液によって物質が細胞に供給される仕組みを説明できる。
重要語句
□毛細血管
閉鎖血管系を持つ動物において、動脈と静脈の間にあり、組織中に広く分布する細い血管。
□組織液
体液のうち、組織の細胞間を満たすもの。毛細血管からしみ出た血しょうに由来する。
□リンパ系
循環系の一つで、リンパ管やリンパ節などからなり、リンパ液を循環させる働きを持つ。鎖骨下静脈を介して血管系とつながる。
授業内容
□血液(ヒトでは約4.5L)様々な物質を運搬する。
…血液は
①液体成分である血しょう
…水90%、タンパク質7%、グルコース0.1%など
…物質を溶かして運搬する
②有形(固体)成分である血球
・赤血球…酸素の運搬に働く
・白血球…生体防御に働く
・異物を捕食する(=マクロファージなど)
・免疫に働く(=リンパ球など)
・血小板…血液凝固に働く
から構成されている。
□脊椎動物は閉鎖血管系を持つ。
→動脈(心臓から出て行く血管)と静脈(心臓へ戻る血管)が毛細血管でつながっている。
…血液は血管から出ることはない。
※昆虫類では毛細血管がない開放血管系を持つ。
→毛細血管からしみ出した血しょうは組織液となる。
※分子量の大きいタンパク質は血管から出られない。
→組織液は細胞に物質(酸素、グルコースなど)を供給する。
→細胞は組織液に不要な物質(二酸化炭素、尿素など)を渡す。
□組織液の一部は毛細リンパ管からリンパ管へ入り、リンパ液となる。
…リンパ管の途中にあるリンパ節で異物を漉し取る。
…リンパ液は鎖骨下静脈で血液と合流する。
授業の目標
肺胞・からだの各組織での酸素の受け渡しの仕組みが説明できる。
重要語句
□赤血球
ヘモグロビンを持ち、おもに酸素の運搬を行う血球。
□酸素ヘモグロビン
酸素とヘモグロビンが結合したもの。酸素濃度の高い肺で形成され、酸素濃度の低い組織で解離し、酸素が供給される。
授業内容
□ヒトの血液が赤いのは赤血球中の色素ヘモグロビン(Hb)による。
…通常のヘモグロビンは暗赤色である。
…酸素と結合した酸素ヘモグロビンは鮮紅色である。
→ヘモグロビンの多い血液 =静脈血
→酸素ヘモグロビンの多い血液=動脈血
□ヒトの循環系は図28のようになっている。
※循環系の図は必ず腹側から見た図になる。左右に注意。
…心臓の右心室→肺動脈→肺胞→肺静脈→心臓の左心房という肺を経由する循環を肺循環という。
…心臓の左心室→大動脈→各動脈→からだの各部→各静脈→大静脈→心臓の右心房とからだの各部を経由する循環を体循環という。
□ヒトの心臓は2心房2心室と4つの部屋に分かれている。
…血管とのつながりは以下の通り。
→心房は静脈とつながっている。
→心室は動脈とつながっている。
…血液の種類との関係は以下の通り。
→左側は動脈血が流れる。
→右側は静脈血が流れる。
□肺胞ではヘモグロビンが酸素ヘモグロビンに変化する。
…肺胞は酸素濃度が高く、二酸化炭素濃度が低い。
→ヘモグロビンは酸素と結合しやすくなる。
→血しょう中に溶け込んでいた二酸化炭素は肺胞で一旦赤血球に渡された後、排出される。
□からだの各部では酸素ヘモグロビンがヘモグロビンに変化する。
…からだの各部は酸素濃度が低く、二酸化炭素濃度が高い。
→ヘモグロビンは酸素と解離しやすくなる。
→組織で発生した二酸化炭素は一度赤血球に渡された後、血しょう中に溶け込む。
授業の目標
血液から尿が作られる過程を「ろ過」「再吸収」に注目して説明できる。
重要語句
□原尿
糸球体を流れる血液がボーマンのうにこし出されたあとのろ液。血液から、血球と大部分のタンパク質が除去されたもの。
□再吸収
原尿が細尿管を通る時に、水・グルコース・アミノ酸・無機塩類などの有用成分が毛細血管内に回収されること。
□集合管
細尿管の下流で複数の細尿管が集まった管。尿の通路となるほか、バソプレシンの作用により水の再吸収も行われる。
授業内容
□腎臓は背側に2個あり、3つの管が出ている。
①腎動脈…腎臓に入ってくる血管
②腎静脈…腎臓から出て行く血管。最も尿素が少ない。
③輸尿管…腎臓でつくられた尿をぼうこうへ送る管。
→腎臓の役割は大きく分けて2つある。
①尿素などの老廃物を尿として排出する。
②尿の濃度を調整して、体液の濃度を一定の範囲に保つ。
…恒常性の維持
例)体内の水分不足→尿量を減少させる。
体内の水分過剰→尿量を増加させる。
□腎臓における尿生成はネフロン(腎単位)ごとに行われる。
…ネフロンは腎小体(糸球体+ボーマンのう)と細尿管で構成される。
…尿生成の過程は以下の通り。
①腎動脈から入った血液は糸球体からボーマンのうへろ過される。
→ろ過された液体が原尿である。
【原尿=血液ー血球ータンパク質】
→血球やタンパク質はろ過されない。
②原尿は細尿管・集合管を通る過程で有用成分が付近の毛細血管へ再吸収される。
→再吸収された後の残りが尿である。
【尿=原尿ー有用成分(グルコース・無機塩類等)】
物質の再吸収率
・水はほとんどが再吸収される。
→水の再吸収量を増減させて、尿の量が決まる。
・グルコースは100%再吸収される。
・無機塩類も多くは再吸収される。
・尿素は一部再吸収される。
授業の目標
肝臓につながる血管を流れる血液中の成分を肝臓の機能を踏まえて説明できる。
重要語句
□肝門脈
消化管を流れた血液が集まって肝臓へと注ぎ込む部分の血管。
□グリコーゲン
グルコースが多数結合してできた多糖類。主に動物細胞に含まれるエネルギー貯蔵物質である。
授業内容
□肝臓は人体最大の臓器である。
…3本の血管が関わっている。
①肝動脈…心臓(左心室)から肝臓に入ってくる血管。
②肝門脈…消化管(小腸など)から肝臓に入ってくる血管。
→肝門脈には消化管で吸収された栄養素(グルコース、アミノ酸など)が多く含まれている。
→肝臓には様々な物質が入り込むため、それらを用いて様々な化学反応が起こっている。
③肝静脈…肝臓から心臓(右心房)へ向かう血管。
□肝臓で起こる化学反応には次のようなものがある。
①グルコースがグリコーゲンに変化する。(その逆も行う)
→グリコーゲンを合成し、貯蔵しておく。
→エネルギーが必要な時は、グリコーゲンを分解してグルコースにし、血液を通じて、全身の細胞に送る。
②血しょう中のタンパク質をつくる。
③有害なアンモニアから害の少ない尿素をつくる。
④アルコールなどの有毒な物質を無毒化する(解毒作用)。
⑤胆汁をつくる(つくった胆汁は胆のうに蓄積される)。
⑥化学反応により、熱を生成する(体温維持に用いられる)。
授業の目標
血液凝固に関わる反応を順を追って説明できる。
重要語句
□フィブリン
血球と絡み合い血ぺいを作って血液凝固を起こす繊維状のタンパク質。フィブリノーゲンを前駆物質とする。
□血清
血液が凝固したときに上澄みにできる淡黄色の液体成分のこと。成分は血しょうに近い。
授業内容
□血管が損傷すると、出血が見られる。
→①出血多量により死に至る場合がある。
→②傷口から異物(細菌やウイルスといった病原体)が体内に侵入する。
□傷口の修復には時間がかかるので、血ぺい(血餅)によって、ひとまず血管の傷口をふさぐ。血ぺいができる過程は以下の通り。
①傷口付近の血小板が因子を放出する。
②①の因子やカルシウムイオンなどの働きにより、血しょう中のプロトロンビン(酵素原)がトロンビン(酵素)に変化する。
③トロンビンの働きにより、血しょう中のフィブリノーゲンが繊維状のタンパク質であるフィブリンに変化する。
④フィブリンが赤血球や白血球と絡まり、血ぺいができる。
⑤やがて傷口が治ると、フィブリンは分解される。